「派手ではないが、コツコツ真面目に」―スミヤ精機、100年を超えて描く次の一歩
■100年、そしてこれから
愛知県高浜市の二つの拠点で、産業車両・繊維機械・自動車という領域の部品を手がけてきたこの会社は、1924年(大正13年)の創業から、すでに100年を超える歴史を刻んでいる。
代表取締役社長の名倉隆司さんは、「派手ではないが、コツコツ真面目にやっている」。この会社をこう表現する。その歩みの中で、いま次の一歩を踏み出そうとしているのが、取締役 製造部長を務める息子の名倉大樹さんだ。3Dプリンターやデータ活用といった新しい挑戦を重ねながら、100年続いた会社の「これから」をかたちにしようとしている。
今回は、名倉さん親子と、現場で働く社員の皆さんへの取材を通して見えてきた、会社の素顔をお伝えする。
目次
■会社概要
会社名:スミヤ精機株式会社
代表者:代表取締役社長 名倉隆司
設立:1924年
従業員数:48名
取扱品目:産業車両向けの部品製造、繊維機械のギヤ部品製造、自動車関係の部品製造
事業所:新田工場・芳川工場(愛知県高浜市)

■現場探訪
新田工場と芳川工場、二つの拠点を構える。主に、加工を担うのは新田工場、仕上がった製品の保管・出荷を担うのは芳川工場だ。現場には、旋盤やマシニングセンタ、歯車の歯を刻むホブ盤、仕上げのシェービング盤、歯車研削盤や円筒研削盤など、必要な設備が一通り自社に揃っている。
生産方式も一様ではない。ライン生産で工程をつなぎ中間在庫を持たない方式にするか、ロットでまとめて流す方式にするか、お客様の生産量に応じて加工の進め方を使い分けているという。
現場づくりにも工夫がある。「女性でも働けるライン」を意識した配置や、カメラや管理ボードを使った見える化など、働きやすい環境を少しずつ整えてきた。
工場内には「安全第一・品質第二・生産第三」の標語も掲げられており、安全と品質があってこその生産だという考え方が根づいている。

■技術・製品の特徴:粗材から完成品まで、一貫してつくる
スミヤ精機の主力は、産業車両・繊維機械・自動車それぞれに使われるギヤ部品だ。
粗材の調達から完成品の仕上げまでを一貫して手がける体制を敷いており、試作や小ロットから量産まで柔軟に対応できるという。
歯車をつくる技術は3代目の頃に身についたもので、今も歯車研削盤などの設備を自社に持ち、外注すれば割高になる工程を社内で完結させている。
近年は、スカイビング加工という新しい歯車加工法に対応できる設備も導入した。繊維機械向けの仕事を大切にしながらも、自動車メーカーと共同で高精度ギヤを開発するなど新しい仕事の柱を育ててきた。
扱う部品は大きなものから小さなものまで幅が広く、お客様の生産量によってライン生産にするかロット生産にするか、加工の進め方そのものを使い分けている。
■社長インタビュー

名倉隆司 代表取締役社長
趣味:ゴルフ、水泳(健康のため)
「派手ではないが、コツコツ真面目に」
― 入社の経緯
もともとは別会社でサラリーマンとして働いていた名倉隆司さん。スミヤ精機の娘婿になったことをきっかけに、「そういう仕事も面白そうかもしれない」と機械加工をゼロから覚えたという。現場で10年ほど経験を積み、工場長を経て、40歳のときに「社長に変わってほしい」と請われて代表取締役に就いた。
― 会社の歴史
初代は瓦の型をつくるプレス機械からものづくりを始めた。戦時中に鉄砲の扱いに長けていたという2代目が戦地から戻った後、古くからの取引先を通じて繊維機械関連の仕事を任されるようになったのが、今につながる歩みの始まりだという。3代目が歯切り加工の技術を身につけたことをきっかけに、産業車両向けの部品へと仕事を広げ、その取引先とのつながりの中でノウハウを蓄積してきた。繊維機械から産業車両、そして自動車の高精度ギヤへ——時代とともに事業の柱を増やしてきた歩みだ。「続けてきたら、これだけ経っていた」と名倉さんは笑う。気づけば創業から100年を超え、ものづくりの歴史を積み重ねてきた。
― 経営で大切にしていること
「公明正大に事業を行う」「共に働く人達に信用・信頼される事業を行う」「お客様に満足される製品を提供する」「社員とともに成長していく事業を行う」という経営理念が掲げられている。先代からの言い伝えではなく名倉さん自身が言葉にしたものだそうだ。本人が繰り返し口にするのは、「派手ではないが、コツコツ真面目にやっている」——それがスミヤ精機らしさだという言葉だ。一方で、「今の時代、それだけではダメだ」とも。「スミヤさんじゃないとダメ」と言ってもらえる、アピールできる加工を持ちたいと考えている。社員に対しても「勉強したいことがあれば勉強させてあげたい」という姿勢で向き合い、普段は現場に細かく口を出さず、ボーナスの支給時には1対1で話す時間を設けているという。
― これから挑戦したいこと
これから10年、事業承継のタイミングを見据えながら、「製造業だけではない仕事もできる会社にしていきたい」と話す。時代の変化とともに自動車業界も変わっていく中で、「新しいことは、やってみてダメならやめればいい」という考え方を大切にしている。まずは挑戦してみることを後押ししたいという。自身の役割は事業承継を見据えて少しずつ減らしていくつもりだと話す一方、AIの活用には人一倍前のめりだ。使いこなすまでには苦戦しながらも、「ここでうまく付き合えない会社は生き残れない」と、日々AIと向き合っているという。繊維、産業車両、自動車——名倉さんはこれを「3本の矢」と呼び、さらに製造以外の新しい矢にも関心を寄せている。
■社員インタビュー

名倉大樹 取締役 製造部長
趣味:ゴルフ、犬
「何でも言ってくる、風通しのよさがある」
― これまでの歩み
新卒後は別の会社で数年働いたのち、スミヤ精機へ戻り、関連企業へ出向。「改善」に取り組む研修プログラムで現場をまわりながら経験を積み、生産技術や加工プログラムを担当したのち、スミヤ精機へ戻った。
名倉社長からは「何をしてもいいぞ」と言われたという。当時は生産技術部そのものがなく、まずは困りごとを一つずつ解決しながら社員との信頼関係を築くところから始めた。その後、製造課長として仕組みづくりに携わり、設備選定から出荷まで一貫して担当する経験も積んだ。やがて製造部長として検査や採用にも関わるようになり、社内DXにも着手し、ペーパーレス化や転記作業の削減を通じて、社員が本来の仕事に時間を使えるようにする取り組みを進めてきた。近年では経理や、加工と物流の役割分担など、組織そのものの見直しにも関わっている。
― スミヤ精機らしさとは
「何でも言ってくる、風通しのよさがある」と答える。社長との距離も近く、発言しやすい空気感が作られているため、不良や問題があってもきちんと申告できる雰囲気につながっているという。社員に対しても、当事者意識や自主性を求めつつ、無理に発揮させようとするのではなく、一人ひとりの得意なことを見極めて任せるようにしているそうだ。
― これから挑戦したいこと
ここ数年で力を入れているのが、3Dプリンターの活用だ。社内のケース製作等積極的に活用している。さらに、これまでとは異なる関係先との協業にも取り組む。
また、新しい加工方法を積極的に取り入れながら、新しい機械や試作を通じて「技術力のある集団」をつくっていきたいと話す。社内DXにも継続して力を入れており、できるだけコストをかけずに自社で仕組みを構築する方針で、野村部長とともに取り組みを進めている。ベンチャー企業から、「モデルとなる会社になってほしい」と声をかけられ、積極的に新しいことへも取り組んでいる。
― 5年後、10年後に目指す姿
まずサプライヤーとして不良品ゼロなど高い評価を得て「1番」になること。そのうえで、新しい仕事を増やし、「みんなで同じ方向を向いて走っていける会社」「みんなが儲かる会社」を目指したいという。採用においては、資格や学歴よりも人柄を重視し、「バイトリーダーをやっていました!」というような、素直に前向きに取り組める人を歓迎する。「本当にやりたいことをやらせてあげられる会社にしたい」——そう語る言葉の端々に、次の世代への手応えがにじむ。

野村直弘 製造部長
趣味:釣り、ウォーキング(100kmを歩くことも)
「今やっていることを、より良くし続ける」
― 入社のきっかけ
就職氷河期のさなか、紹介でスミヤ精機と出会った。工作機械のことは何も知らないまま工場を見学し、社長から直接機械について教わったことがきっかけで製造グループに配属。その後、品質保証やISOなど、さまざまな業務を一通り経験してきた。
― 仕事のやりがい
「今やっていることを、より良くし続けること」だという。改善するにも知識があってこそアイデアが出るものだと、勉強を重ねてきた。近年はAIにも「自分の仕事を代わりにやってくれる状態」を目指して学びを広げており、セミナーにも積極的に参加しながら日々知識を更新しているそうだ。名倉大樹部長とともに、社内DXの取り組みも進めている。
― この会社の好きなところ
「やりたい」と言ったことを反対せずにやらせてくれる社風だという。資格取得を後押しする制度や、社員の改善提案を表彰する仕組みもあり、コロナ禍で一時中断していた全社員参加の発表会も、昨年から再開された。挑戦を後押しする土台が、着実に根づいていると感じている。
― 目指したい職場
展示会にも積極的に足を運ぶなど、日々学びを深めているという。最近は「これをやってみたい」と手を挙げる社員が減ってきたと感じており、もっとボトムアップの提案が出てくる職場にしていきたいと考えている。

伊藤裕司 製造グループ 組長
碧南市出身。趣味は映画鑑賞(「キングダム」がお気に入り)。
入社から21年。NC旋盤からマシニングセンタまで一貫して製造グループを歩んできたが、別の工場で組長を務めていた先輩の退任をきっかけに声がかかり、今の工場へ異動。組長を務めて2〜3年になる。組長になってからは現場に入る機会が減り、上司と現場の間に立って橋渡しをする難しさを感じる場面も増えたというが、「働きやすい環境と、話をよく聞いてくれる人の多さ」が長く続けられた理由だと話す。
治具設計や刃物選定、商社と連携したコスト低減などを手がけ、「年間これだけかかっていたコストがこれだけ下がる」と数字で成果が見える瞬間にやりがいを感じてきた。
近年はエアコンの増設など職場環境も改善されており、部長たちが導入する新しい設備を使った、これまで手がけたことのない加工や、ロボットを活用した省人化にも関心を寄せ、展示会にも足を運んでいるという。

K.N(入社1年目)
安城市出身。趣味は野球観戦(中日ドラゴンズファン)とアニメ。
研修期間中で、事務から現場まで一通りの持ち場を経験してきた。
エージェントの紹介でスミヤ精機と出会い、工場見学を経て入社を決めた。
「総合職なので、決まりきった働き方ではなく柔軟に対応できそう」と感じたことが決め手だったという。
先輩や事務・生産管理のメンバーが優しく丁寧に教えてくれることに助けられているという。まだあまり慣れていないなか、3台の機械を任される場面もあったというが、先輩の支えを借りて乗り越えられたことは、自身の成長を実感する出来事になっているという。
まだやりがいと呼べるものを見つけている途中だが、「ライン作業を思い描いていたが、実際は人の手で一つひとつ作業していることに驚いた」と話す。ふだん意識することのない部品を、スミヤ精機のような会社が支えて自動車ができていることを、身をもって実感しているという。早く仕事を覚えて、スキルアップにつなげていきたいと話す。

R.K(入社1年目)
刈谷市出身。趣味は熱帯魚などの生き物、漫画、そして憧れの車(RX-7)を買うことをモチベーションに働いているという。
検査部署での道具の使い方の研修から、生産事務、そして現在は現場で、複雑ではない製品を中心に機械の使い方を学んでいる最中だ。自動車が好きで、ものづくりに関わる会社を探す中、自宅からの近さも決め手になった。
「ミスがあったときは先輩に聞いて、次はもっとうまくやろうと考えるようにしている」と、前向きな姿勢で日々の仕事に向き合う。
精密さが求められる製品の加工では神経を使う場面も多いというが、先輩に気軽に相談できる環境がやりやすさにつながっている。年齢の離れた先輩たちも分け隔てなく接してくれることが、働きやすさの理由の一つだという。これから後輩ができたときには、しっかりサポートできる存在になりたいと話す。
■未来への挑戦
自社で歯車を削り出す技術や、ものごとに丁寧に向き合う姿勢は、代々受け継がれてきたスミヤ精機の軸だ。その軸を守りながら、いま新しい挑戦を積極的に重ねているのが取締役製造部長の名倉大樹さんだ。3Dプリンターを使った挑戦や、ベンチャー企業と共同で進めるシステムの構築など、これまでのやり方の延長線上にはなかった取り組みに次々と手を伸ばし、「工場全体をもっと活発にしていきたい」と、次の一手を模索し続けている。
守るべきものを守りながら、変わることを恐れない。その姿勢は、「製造業だけではない仕事もできる会社にしていきたい」と事業承継の先を見据える名倉隆司社長にも重なり、親子二人三脚の歩みが、スミヤ精機の次の一歩を形づくっていきそうだ。
■出会いたい人・企業
コツコツと積み重ねてきたスミヤ精機が、次の100年に向けて出会いたいと考えているのは、次のような人・企業だ。
- 航空機・宇宙、ドローン業界の企業
- 協業し、シナジーが出せるベンチャー企業
- 金属(鉄・鋳物)加工に強みを持つ企業
- 3Dプリンターを使った新しい取り組みに関心のある人・企業
- 歯車の加工で困っている企業
- キャパシティを超えた発注先を探している企業
■1分でわかるスミヤ精機株式会社

■MAKERS編集後記
「続けてきたら、これだけ経っていた」——名倉隆司社長のその一言に、この会社の歩みが凝縮されているように感じた。
瓦の型づくりから始まり、鉄砲、繊維機械、産業車両、自動車部品へ。時代に合わせて仕事の形を変えながらも、コツコツと積み重ねる姿勢だけは変わらない。そして今、新しい挑戦も重ねている。「派手ではないが、コツコツ真面目に」という社長の言葉は、飾らないこの会社らしい自信のあらわれのように感じた。
創業から100年を超えたスミヤ精機。次の100年へ向けて、どんな出会いが待っているのか、楽しみだ。
■番外編~弊社担当営業のコメント~
今回の取材にあたり、スミヤ精機様より、「せっかくなら担当営業からのコメントも…」とご提案をいただき、番外編として掲載します。
スミヤ精機様を担当して約3年半になりますが、名倉部長や野村部長にはいつも気さくにお話しいただき、面談のたびに多くのことを勉強させていただいています。
社内の風通しの良さや、現場の声を大切にしながら新しいことにも前向きに挑戦される姿勢は、私自身も参考にしたいと感じるところです。
これまで様々な設備を導入いただいたご縁を大切に、これからも皆様から学ばせていただきながら、スミヤ精機様のものづくりに貢献できるよう取り組んでまいります。
今後とも末永くお付き合いさせていただければと思います。
(担当営業 Y.I)
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