2025.12.28

工作機械の歴史──産業を支えてきた「ものづくりの原点」

工作機械の歴史──産業を支えてきた「ものづくりの原点」

私たちが日常的に使うスマートフォン、自動車、家電、医療機器。
これらのほぼすべては、実は「工作機械」でつくられています。
工作機械は金属を削り、穴をあけ、形状をつくる“マザーマシン(母なる機械)”と呼ばれ、現代の産業を支える基盤です。
ここでは、そんな工作機械がどのような歴史を歩んできたのかを、流れに沿って分かりやすく紹介します。

 

■ 18世紀:産業革命とともに誕生した工作機械

工作機械の始まりは18世紀後半、イギリスの産業革命にあります。
蒸気機関の発明によって新しい装置をつくる必要が生まれ、金属部品を精密に加工する機械が求められるようになりました。

この時期、旋盤・フライス盤・ボール盤といった、現代の工作機械の原型が続々と登場。
特に1797年、ヘンリー・モーズリーが開発した“ねじ切り旋盤”は画期的でした。
規格化されたねじを安定して作れるようになり、機械製造の精度は飛躍的に向上します。

この「部品は機械で作り、機械は部品で構成される」という循環こそ、モノづくりの革命の始まりでした。

 

■ 19〜20世紀前半:量産を支える機械へ

19世紀後半から20世紀にかけて、工作機械は産業発展に欠かせない存在になります。
アメリカでは自動車の大量生産を目指したフォードがコンベア方式と専門機械を導入。
この時代、専用旋盤やジグボーラー(治具穴あけ機)など、“量産のための機械”が次々に生まれました。

また、日本でも明治期より機械工業が発達し、戦後には国産工作機械メーカーが台頭。
切削技術・精度の高さは世界的に評価され、現在でもトップレベルの品質を誇ります。

 

■ 1950〜1980年代:NC・CNC化という大進化

工作機械が大きく進化する転換点となったのが数値制御(NC)の登場です。

1950年代、アメリカで航空部品の高精度加工のために“NC旋盤”が開発されました。
従来は職人の手技に依存していた加工が、プログラムで制御できるようになり、品質の安定・複雑形状の加工が可能になります。

1970年代にCNC(Computer Numerical Control)が普及すると、

・高精度加工
・自動工具交換
・複雑加工
・大量生産
が一気に加速。
現代のNC旋盤・マシニングセンタの基礎がこの時代に確立します。

 

■ 2000年代:複合化・高速化・自動化の時代へ

2000年代に入ると、加工工程を一台に集約する「複合加工機」が普及。
旋削・ミーリング・穴あけを同時に行える機種や、5軸制御による多面加工など、
精度と生産性の両立が求められるようになります。

さらに、ロボットによる自動搬送や夜間無人運転、
IoT・センサーを使った状態監視など、工場のスマート化が加速。
「機械が故障を予測する」
「工具寿命を自動で管理する」
といった機能も増えています。

 

■ 現代:加工だけではない“デジタル工作機械”へ

現在の工作機械は、もはや“削るだけの機械”ではありません。
CAD/CAMとのデータ連携、AI補正、加工条件の自動最適化など、
デジタルと高精度加工が組み合わさった「インテリジェントマシン」へと進化しています。

今後は、
・デジタルツイン(仮想空間での加工検証)
・自律加工(AIによる自動最適化)
・工場全体の自動協調
など、さらにスマート化が進むと予測されています。

 

■ 工作機械の歴史は、ものづくりの進化そのもの

工作機械の200年の歴史は、
“モノづくりの進化”そのものと言えます。

・人の手技 → 機械化
・機械化 → NC化
・NC化 → デジタル化
・デジタル → 自動化・スマート化

常に産業の発展とともに進化し、製造業の未来を切り拓いてきました。

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